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2021年08月28日 [除霊]

NO289・・・13 魂の歌

インドスピリチュアル寓話より

 アクバルは、インドにムガール帝国を樹立した偉大な帝王だ。 王のもとには、「九つの真珠」と呼ばれるすぐれた人々がいたが、そのなかのひとりにタンセンという音楽家がいる。彼がタンブーラを弾きながら歌うとき、聴く人はだれもが深い恍惚境に入りこんだと言われている。
ある日、タンセンはいつものように、アクバル帝のまえで歌っていた。タンセンが歌いおわると、宮廷には音楽の余韻とともに心地よい静寂がただよっていた。

 「タンセン、なんとすばらしい音楽だろう! 私はおまえのように歌う人をみたことがない。おまえは最高の歌い手である」とアクバルが言った。
「身にあまる光栄です、王よ。しかし、私は正直に申し上げねばなりますまい――私よりはるかにすぐれた歌い手がいるということを・・・」
「信じられない、タンセン。おまえより上手に歌う人間がいるなんて・・・。それはだれなのだ?」
「私の師で、ハリダスという名前です」
「そんな人がいたのか。私はぜひともハリダスの歌を聴いてみたい」
「師は人のためには歌いません」
「私はアクバル帝王だ。私の命令にそむくことはできまい」
「師はサドウー―世捨て人―です。王といえども、歌わすことはできないでしょう」
「では、どうすればよい? 私はなんとしてもハリダスの歌を聴いてみたいのだ」
「では、まず師の居所を捜してみましょう」

 タンセンが人を使ってハリダスの居所を捜させると、ハリダスはヤムナ−川のほとりの小屋にいることがわかった。近くに住む人たちの話では、ハリダスはほとんど一日中川辺に座っているが、ときおり、真夜中に歌声が聞こえることがあるという。
満月の夜、アクバルとタンセンはふたりだけでハリダスの小屋にむかった。小屋のまわりは葺が高くおいしげり、身を隠すには絶好の場だった。 彼等はじっと待った。 夜が更けていった。満月が高くのぼった。 静けさが深まっていった。まわりにはひとっこ一人いなかった。
そして、ついにハリダスが歌いはじめた。 それは不思議な歌だった。 それは魂の奥の奥にしみわたっていくような歌だった。
アクバルは、声もなく、呆然と、ハリダスの歌を聴いていた。

 ハリダスは、月にむかって、川にむかって、闇にむかって、歌っていた。 ときに一弦琴を奏で、ときに踊りながら、歌っていた。
アクバルの眼から涙がとめどなくあふれだしてきて、とまらなかった。 彼等は無言のまま夜を過ごした。 宮廷に戻ってから、アクバルが言った。
「タンセン、私はいままでおまえにまさる歌い手はいないと思っていた。しかし、ハリダスの歌を聴いたいま、おまえは無にひとしい。このちがいは、いったいなんなのだろうか?」
タンセンが静かにこたえた。

 「王よ、私は人々のために歌います。それによって富や名声を得ます。私はなにかを得るために歌っているのです。私の師はちがいます。師は静寂のために歌います。至福のために歌います。 私はなにかを得るために、人々にむかって歌います。が、師はなにかをすでに持っているがゆえに、神にむかって歌うのです。 これは決定的なちがいです」

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