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2021年08月28日 [除霊]

NO288・・・12 光の宮殿

スピリチュアル寓集より
 王は、後継者を選ばなければならなかった。 彼には三人の王子がいた。 どのようにして後継者を選んだらよいか助言をもとめるため、ある日、王は聖者を訪れた。
「後継者にはなにをもとめるのかね?」 と聖者がたずねた。
「賢く見ることのできる洞察力です」
数日後、王は三人の王子を宮殿に呼んで、言った。

「後継者を決めるときがきた。その方法は、おまえたちの宮殿をなにかでいっぱいにすることだ。なにでいっぱいにしてもよい。しかし、予算はコイン一枚、期間は一週間だ」
三人の王子は、それぞれ広大な宮殿に住んでいた。
第一王子は農家から収穫後のワラを買いあつめて、宮殿に運び込んだ。 しかし一週間後に王が訪れたときには、宮殿の三分の二しか埋まっていなかった。
王は不満げな様子で、第二王子の宮殿に向かった。 宮殿に近づくにつれて、いやな匂いがおそってきた。その匂いはますます強烈になり、宮殿に着くころには呼吸することさえむずかしいほどだった。 王子は町中のゴミを集めて、宮殿をゴミでいっぱいにしたのだ。 王は強烈な匂いに吐き気をもよおしながら、絶望的に首を横にふった。
王宮に戻ると、いちばん若い王子が言った。

「私の宮殿には今夜おいでください」
王は、彼が一週間のあいだ、あらゆる家具を運び出し、毎日宮殿内を掃除して、ぴかぴかにみがきこんでいるという噂を聞いていた。しかし、そのあとになにかが運び込まれた様子はなかった。

 王は、夜になって、第三王子の宮殿をおとずれた。 王子は宮殿内に王を招きいれた。 宮殿にはだれもいなかった。 家具も、食器類も、あらゆるものが運び出されて、なにひとつ残ってなかった。
静まりかえった宮殿のなかを、二人は歩いた。 それぞれの部屋と廊下の隅々には、明かりがともされていた。それは神秘的なうつくしさをかもしだしていた。 王が言った。
「すばらしい。なんと神秘的なうつくしさだろう! しかし、宮殿のなかはからっぽではないか。私は、なにかでいっぱいにするようにと言ったはずだが・・・」
王子はにっこり笑って、言った。

「宮殿内の空間はすべて、明かりで照らしだされています。おわかりになりませんか? 宮殿は光で満ちているのです」
王子の顔を見ながら、王は満足そうにうなずいた。

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